蕗の薹

家の庭にもようやく、遅い春がやって来たようだ。まだ溶けきれぬ雪の下から、蕗の薹が顔を出し始めた。
　雪を少し除けて、緑浅い蕗の薹を一人分だけ取って、天婦羅にして食べた。
　自然の恵み、春の香り、そして優しい苦みが口の中で広がった。春を待って居たのは人間だけじゃない。それぞれの命が辛抱強く、待ち焦がれて居たに違いない。
　まだ桜は咲いていない。霜が降りる朝も有る。何か大事な物を教えてくれてる。愚痴も溜息も、自然の中では何の意味も無い。謙虚にひたすら前を向いて。
　今に全てを懸けて自分の為に、何をしたら良いのか、信じる物を疑わず。言い訳は、自分に嘘を付いてる証拠。春は目の前に有るのだから。