目の前に初めから有った

この世に生を持った時、目的や役割そんな物は何も無い。ただ生まれて来たと言う事実だけが、現実の時間に作用され動き出す。
　やがて小さな経験が記憶に残り、観念の息吹が重みを感じ、都合良く生きる狡さが備わって来るのです。
　遠くに有る幻を追いかけても、手に出来るささやかな希望に今を感じ、それでも前を向いて歩いていたと言い聞かせる。
　初めから目の前に有る、未来へと続く階段が、重い過去を背負いながら、登り始めても疲れが足を止めてしまう。
　何が必要で何が要らないのか、訳も分からず迷い、時間だけが過ぎて行く。虚しさは時に自分を強くする。心の隙間に秋風が爽やかに通り過ぎた。
　九月が終わり、安堵の気持ちが自由を取り戻し、見え始めた未来の階段。想像は現実を具体化し、形有る物に変えて行く。
　薄紫の夜明けが、新しい思いと共に、今日から明日へと、幾重にも重なる感情と、心地良い焦りが確かな物をつかみ始めてる。